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排便機構

排便のメカニズム

排便のメカニズムは単純ではなく、中枢神経、末梢神経、結腸壁内神経叢、腸管運動、心因的要素等が複雑に絡み合っており、未だ解明されていない部分もあります。

排便のメカニズム
排便のメカニズム2

普段は、便は下行結腸からS状結腸に主に貯まっています。

直腸から肛門に移行する部分は、恥骨直腸筋により前方へ引き寄せられて、ある一定の角度をもち(直腸肛門角)、便が肛門へ簡単に移動できなくなっています。

肛門部は内肛門括約筋、外肛門括約筋の力で閉じています

排便のメカニズム3
排便のメカニズム4

朝起きて食事をとると、起立反射、胃結腸反射が働いて便が直腸に送られます。
直腸が膨らむと更に便意を感じますが、排便の準備ができるまで、意識的に排便に対して抑制が働き、肛門はまだ閉じた状態で便が漏れないようにしています。

排便のメカニズム5

排便の準備が整うと、脳からの抑制がとれて、直腸肛門角も緩やかになり、肛門も開き、腹圧をかけることと直腸の収縮により、排便されます。

直腸肛門角

安静時は、恥骨直腸筋に引っ張られて直腸と肛門の角度が保たれているため、便が直腸に保たれます。

排便時は、排便の体勢を取ることと筋肉が緩むことにより、直腸肛門角が開き、便が出やすくなります。

直腸肛門角

排便の反射

起立反射

しばらく寝た後(起床時など)、起きあがると腸が動き出して、便が直腸に送られます。

胃結腸反射

食事をすると腸が動き出し、便が肛門側に送られます。

直腸肛門反射

直腸に便が貯まると、直腸のセンサーで便が貯まったのを関知し、大脳と脊髄に伝えられ、肛門を閉じる反射が起こります。

大腸の運動

分節運動

腸の近い部分で交互に膨らんだり、縮んだりする運動で、内容物を破砕し混和する運動です。

分節運動

蠕動運動

収縮でできたくびれが、口側から肛門側に移動していく運動。
内容物を肛門の方へ移動させる運動です。

蠕動運動

肛門周辺の筋肉

人間の体にある筋肉は、横紋筋、平滑筋、心筋に分けられます。

横紋筋

骨格筋

腕や足や指等、意識的に動く部位に存在。

骨盤底筋群、外肛門括約筋が横紋筋で出来ています。

これらは意識的に動かす事が可能です。

平滑筋

内臓筋

血管、消化管、膀胱、子宮などに存在。

大腸、直腸の壁、内肛門括約筋が平滑筋で出来ています。

これらは無意識のうちに動いており、意識的に動かす事は基本的には不可能です。

上記以外にも、排便時には腹圧をかけるため横隔膜を固定し、腹直筋にも力がかかるためそれらの筋肉も関係してきます。

肛門周辺の神経

神経はまず中枢神経(脳、脊髄)と末梢神経にわけられます。

末梢神経は、更に自律神経と体性神経に分けられます。

自律神経

自律神経は自分の意思で調節できない不随意であり、交感神経と副交感神経があり、それぞれが拮抗的に働き、主に内臓、血管の情報伝達(求心性)、内臓、血管の働きを制御(遠心性)しています。

体性神経

体性神経は、自分の意思で調節できる随意であり、主に体の知覚、運動を制御します。

排便に関連する神経は、下腹神経(交感神経系)、骨盤内臓神経(副交感神経系)、陰部神経(体性神経)があります。

下腹神経と骨盤内臓神経は自律神経であり、陰部神経は体性神経です。

下腹神経、骨盤内臓神経は大腸、直腸の情報や動き、内肛門括約筋の動きを支配しています。

陰部神経は外肛門括約筋の動きや肛門部の感覚を支配しています。

中枢神経

脳、脊髄

便意を感じた時の腸や肛門の動きを調節します。
大脳皮質、橋、仙随(2,3,4)と言われていますが、まだ完全に解明されていません。

末梢神経

体性神経

感覚神経、運動神経

陰部神経

肛門周囲の知覚、肛門挙筋、肛門外括約筋を支配しています。

自律神経

交感神経(求心性、遠心性)

下腹神経

基本的に排便には抑制的に働きます。

副交感神経(求心性、遠心性)

骨盤内臓神経

基本的に排便には促進的に働きます。

 

上記以外にも横隔膜や腹直筋を支配している末梢神経、中枢神経も関係してきます。

また、陰部神経には様々な枝があり、正確にはそれぞれ呼び名が違ってきます。

更に、肛門挙筋を支配している神経は、お腹側からの神経にも支配されているという説もあり、この部分もまだ完全に解明されてはおりません。